シンゴジラはなぜヒットしたのか

オリコンニュース(http://www.oricon.co.jp/news/2081609/full/)によれば、庵野秀明氏が脚本、総監督を務め、2016年7月29日に公開された映画『シン・ゴジラ』は、2016年11月16日までの111日間で、観客動員550万人、興行収入が80億を突破したそうです。興収80億円超えの記録は、邦画実写映画としては、2013年12月21日に公開された『永遠の0』以来で、シン・ゴジラは正にヒット作品だと言えます。

 

シン・ゴジラは、私が昨年見た映画の中で一番印象深い映画でした。

最近はNetflixYoutubeで気軽に映画をみれるため、映画館に通う頻度が少なくなっていたのですが、シン・ゴジラは映画館足を運び、しかもリピートまでしてしまったほどです。

今回はそんなシン・ゴジラがどうしてヒットしたかについて、自分なりの視点を交えながら分析していきたいと思います。

 

 シン・ゴジラが流行った理由は、
ゴジラのコアファンやゴジラに慣れ親しみのある人に加えて
ゴジラをみたことのない人やゴジラに関心がない人」にもささった映画だからです

 

しかも、今回の映画の内容を踏まえると、むしろシン・ゴジラは「ゴジラをみたことのない人やゴジラに関心がない人」をターゲットに置いたゴジラ映画だったのではないかと私は思います。

 初の実写化ということで、石原さとみ長谷川博己竹野内豊をはじめとする豪華俳優陣に惹かれて鑑賞した人もいるでしょう。

また、エヴァンゲリオンでお馴染みの庵野秀明監督に期待して鑑賞に至った人もいるでしょう。

 

ただ、中でも特筆すべきなのは
所得の高いエリート社会人
知的好奇心が強く社会問題に関心のある人
が中心ターゲット層となっていることです。

 

彼らが持つインサイトには

ゴジラ=ただの怪獣アクション映画、子供じみたフィクションに過ぎない」といったものがありそうです。

しかし、ゴジラの強みは、まさに「社会性の強い怪獣映画」であることなのです。

そもそもゴジラは、古代生物の末裔が、人間の度重なる水爆実験により住処を奪われて出現したという設定から、1954年に誕生しました。

しかし時代が変わるにつれ、ゴジラ映画はだんだん社会的メッセージが薄くなり、怪獣映画のイメージが強くなっていった背景があります。

 

以上を踏まえ、庵野監督はゴジラの真の強みを生かし、ターゲットに響くような社会性のある現代版ゴジラを作ろうとしたのでしょう。

  

 

実際に今回の内容は、以下の点で社会的なメッセージが強く、見た人に深く考えさせるような内容でした。

 

1. ゴジラ発現の原因が核廃棄物であることがストーリーの各所で強調されています。

しかも、その事実がゴジラを倒すきっかけとなり、ストーリーの中でかなり重要な情報として機能しているのです。

これは、まるで世界で続く核実験に警笛を鳴らしているような印象を与えます。

 

2. ストーリーでは、ゴジラ発現の際の国の対応が詳細に描かれています。

それは、責任のなすりつけや対応の遅れなど、お世辞にもスマートと言えるものではなく、硬直的な官僚機構への皮肉が読み取れます。

 

3. ゴジラと国家権力の戦いにおいては、日本とアメリカの安全保障条約が有事にどのように発動するかがリアルにわかります。

海外諸国との外交的関係も描かれ、国際的な日本の立ち位置や、外交戦略の重要性が示唆されていました。

 

このように、ストーリーの各所に様々なテーマが埋め込まれており、ゴジラファン以外や大人までが楽しめるゴジラ映画となったのです。一度見ただけでは飽き足らず、リピーターを促す要因になったともいえるでしょう。

 

...さらに、シンゴジラの魅力は、そのリアリティです。

「実際に似たようなことが起きそう」「これはあの出来事と似ている」など現実世界とのつながりを作ることにより、映画の社会的メッセージがより一層“自分ごと“のように思え、ストーリーに引き込まれていくのです。

 

具体的には、

福島第一原子力発電所で核の恐ろしさを思い知った日本人に核のテーマで挑むタイムリーな内容に加え、

シンゴジラでは、東日本大震災での国の対応が綿密に調査され、セリフやシーンの一つ一つに反映されています。

そのため、官僚や政治家、その知人層など内情を知る人間は、非常に興味深く映画を見たことでしょう。日本経済新聞では「シンゴジラから官僚組織を考える」といったコラムが書かれるなど、エリートビジネスパーソンの中でもかなり話題になっていたことがわかります。

国家の緊急事態という観点では、ゴジラ発現によって、いつ起きるかわからない南海トラフ地震北朝鮮のミサイル侵攻、ISによるテロリズムを連想した人も少なくはないでしょう。

また、そもそもの舞台が東京で、知っている場所が出てくるのもリアリティを増す要因です。東京駅のオフィス崩壊のシーンでは、サラリーマンや内定者の悲鳴が聞こえてきました。

 

このように、社会的メッセージにリアリティが加わることで、より共感を呼ぶゴジラが誕生しました。

 

 
シンゴジラのヒットは、「ゴジラ=ただの怪獣映画」というイメージを壊し、本来のゴジラの強みを強調してゴジラを楽しめる層を拡大した点で、ゴジラ映画に新しい風を吹かせたと言えるのではないでしょうか。
ゴジラを見ることで、本当に”ゴジラ”が現れた時の対策がよりよくなるといいですね。